ベテランコンビの走りとチーム力で戦い抜いた3時間<br>厳しいコンディションを乗り越え掴んだ貴重なポイント

ベテランコンビの走りとチーム力で戦い抜いた3時間
厳しいコンディションを乗り越え掴んだ貴重なポイント

by Koichi Yamaguchi/ May 03-04, 2025

世界的にも有数な山容を誇る富士山の麓に佇む富士スピードウェイ。標高最高585mの高地に1475mという長いホームストレートを持つ日本屈指のサーキットで、SUPER GT第2戦が開催された。第1戦岡山で予選19位から6位入賞という快挙を成し遂げたK-tunes Racingは、再び上位を目指す戦いに挑んだ。

予選:惜しくも長い決勝レースを見据えた戦略が奏功せず

ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日、富士スピードウェイには眩しい初夏の陽光が降り注いだ。朝9時の段階で19度を記録した気温は5月下旬並みの陽気となり、シーズンオフの公式テストでは経験できなかった高温路面での対応が求められた。

新田守男選手、高木真一選手のベテランコンビとチームは、タイヤ持込可能数最大6セットという今季レギュレーションの中で、予選の一発タイムよりも決勝レースでのロングディスタンスを重視する戦略を採用。グリップが高く一発のタイムが出やすいソフト寄りではなく、決勝レースを見据えたハード寄りのタイヤで予選に臨んだ。

午後2時48分、GT300クラスBグループQ1のスタートと同時にコースインした高木選手。路面温度33度という高温コンディションの中、アタック中盤に見事なドライビングで1分36秒989のベストタイムを叩き出し、一時は6位につけるなどQ1突破の勢いを見せたが、時間経過とともにライバルチームもタイムアップを図り、徐々に順位が後退。最終アタック中にブレーキミスもあり、結果的にグループB11位に。Q2進出はならず、21番グリッドからの決勝スタートとなった。

決勝:ポイント獲得へと導いたベテラン2人の執念の走り

決勝当日も晴天に恵まれ、気温24℃、路面温度38℃という高温コンディションとなった。14時18分、ブルーシグナルが点灯し壮大な富士の景観を背景に3時間という長丁場レースの火蓋が切って落とされた。

第1スティントを担当した高木選手は、ロングディスタンスを見据えてハード寄りのタイヤを選択。しかし、高い気温と路面温度の影響からか、エンジンパワーとタイヤが本来のパフォーマンスを発揮できない厳しい状況での戦いとなった。それでも高木選手は冷静に燃費走行を続けた。スタートから約30分後に発生したアクシデントによるFCY(※1)を経て、15時20分、35周目に15位までポジションを上げてピットイン。給油とタイヤ交換を行い、新田選手にバトンを渡した。

第2スティントを担当した新田選手は、第1スティントの苦戦を踏まえてソフト寄りのタイヤへと戦略を切り替えたが、こちらも期待したパフォーマンスを得られず苦しい走行を強いられた。さらに、第1スティント中のFCY時にマシンに発生した制御系トラブルが原因で高木選手が前走車と接触。この接触により、新田選手の走行中にドライビングスルーペナルティ(※2)が課せられ、一時は27位まで順位を落とす苦境に立たされた。

レース残り55分、72周目に第3スティントで再び高木選手がステアリングを握る。高木選手は、第2スティントでのソフト寄りのタイヤの戦略が奏功しなかったことから、第1スティントと同様のハード寄りのタイヤを選択。夕刻に向かい路面温度が低下したためか第1スティントよりもタイヤがパフォーマンスを発揮。さらにエンジンも復調し、目覚ましい追い上げを見せる。1分39秒台前半から1分38秒台後半で周回を重ね、残り30分の85周目には1分38秒637のベストラップを記録した。

第3スティント序盤の最終コーナーで後続車に接触され、バランスを崩してスピンする不運に見舞われながらも、持ち前の経験と技術で着実に順位を上げていった高木選手。他チームのマシントラブルなどもあり、17時20分、K-tunes RCF GT3は105周を走破して13位でチェッカーフラッグを受けた。予選21番手からの8ポジションアップという素晴らしい追い上げにより、今シーズンから15位までがポイント獲得可能となった新ルールのもと、貴重な3ポイントを獲得した。

これで開幕戦の10ポイントに続く2戦連続でのポイント獲得となり、シーズン序盤から着実に戦績を積み上げている。マシンとタイヤとのマッチングに課題を抱えながらも、新田・高木選手というベテランドライバーコンビによる巧みな走りとチーム力が実を結んだ結果である。次戦以降に向けての着実な一歩を刻んだ富士での3時間バトルとなった。

(※1)FCY(フルコースイエロー):レース中にトラブルが発生したとき、コース全域で追い越しが禁止となり、全車規定速度に落として走行するレースコントロールシステム。赤旗やセーフティカーを出すまでではない小規模なアクシデント、デブリの回収などに対して安全確保のために講じられる。

(※2)ドライビングスルーペナルティ:レース中に課せられる罰則の一種で、科せられたドライバーはピットレーンに進入し、停止せずにそのままピットレーン出口からコースに復帰しなければならない。

Comments

SUPER GT Round.2 富士を終えて

  • Masahiko Kageyama

    Masahiko Kageyama 影山正彦 監督

    ダンロップタイヤの特性を鑑みて決勝レースでのタイヤライフを重視したセッティングに取り組みましたが、残念ながら予選はQ2進出を果たせませんでした。決勝も厳しい展開でしたが、チーム全員が諦めずに戦い抜いた結果が13位ポイント獲得につながりました。課題はまだまだありますが、ポイントを積み重ねることがシリーズ戦では重要です。この勢いで次戦セパンでも良い結果を出したいと思います。

  • Morio Nitta

    Morio Nitta 新田守男 ドライバー

    決勝の第2スティントでは第1スティントの苦戦を踏まえソフトなタイヤをセレクトしましたが、思いのほか路面温度が高く、厳しい戦いとなりました。高温のせいかエンジンも本来のパフォーマンスではなく、特にストレートスピードと低回転域でのトルク不足が課題でした。次戦のセパンはさらに高温多湿なので、その環境でどう戦うか検討が必要です。状況は厳しいですが、上位を目指して全力を尽くします。

  • Shinichi Takagi

    Shinichi Takagi 高木真一 ドライバー

    予選は決勝重視のロングライフタイヤを選んでいた割にフィーリングが良く、Q1通過できると思っていたので、最終アタックでのブレーキミスが悔やまれます。トラブルによるペナルティや後続車の接触によるスピンなど不運もありましたが、最終スティントではマシンの調子も回復し、ポイント獲得につながりました。本番のレースを通じて得られたデータも大きな収穫であり、次戦に向けて進化していきます。

  • YAMAJI HAYATO

    YAMAJI HAYATO 山地隼人  メカニック

    K-tunes Racingのメカニックは若手が多いので、今回のような長丁場のレースは貴重な経験となりました。2回のピットインが義務づけられた3時間レースでは、ピットワークがレース結果を左右しかねません。そんな中、チーム全体で連携し大きなミスなく完遂できたのはよかったです。今後向けて、さらにピットワークの精度を高めていきたいと思います。

Results

2025 AUTOBACS SUPER GT Rd.2 FUJI

  • Number
    96
  • Machine
    K-tunes RCF GT3
  • Driver
    新田守男/高木真一

05/03 公式予選 富士スピードウェイ 天候:晴れ 路面:ドライ

  • Position
    21st
  • Best Time
    1’36.989
  • Tyre
    DL

05/04 決勝レース 富士スピードウェイ 天候:晴れ 路面:ドライ

  • Position
    13th
  • Best Time
    1’38.637
  • Tyre
    DL
2024年以前のレースレポートなど過去の記事はこちらから

Archives

2024年以前のレースレポートなど

Share!