序盤のアクシデントが響く<br>新コンパウンドタイヤへの期待を残してリタイアに

2025.09.20-21 SUPER GT Rd.6 SUGO Race Report序盤のアクシデントが響く
新コンパウンドタイヤへの期待を残してリタイアに

by Koichi Yamaguchi/ September 26, 2025

宮城県の山間部に位置するスポーツランドSUGOで、SUPER GT 2025年シーズン第6戦が開催された。中高速コーナーが連続するテクニカルなレイアウトで知られるこのサーキットは、K-tunes Racingにとって相性が良い。2023年にはポールポジションから8位入賞を果たした実績を持つSUGOで、サクセスウェイト31kgというランキング上位陣に比べて軽い状態での参戦となった今大会。ダンロップが新開発したコンパウンドのタイヤ導入もあり、巻き返しへの期待が高まっていた。

予選──改修路面と新タイヤへの合わせ込みに苦戦

9月20日、予選日の午前中に行われた公式練習走行は、路面がウェットからドライへと変化する難しいコンディションとなった。

今年SUGOの路面が全面改修されたことに加え、ダンロップが新しいコンパウンドのタイヤを導入。新タイヤとのマッチングを確認したかったが、公式練習前半はレインタイヤでの走行を余儀なくされ、新しいスリックタイヤでの合わせ込みに十分な時間を割けなかった。

午後2時5分、GT300クラスAグループの予選Q1がスタート。気温20℃、路面温度26℃の完全なドライコンディションの中、高木真一選手がアタックを担当した。

高木選手は慎重にタイミングを見極め、2ラップ目で1分26秒679、3ラップ目で1分22秒280と着実にタイムを短縮。そして4ラップ目、1分18秒308のベストタイムを叩き出した。

しかし結果は10位。Q2進出を果たした9位とはわずか0.111秒差という僅差での敗退となった。

「まったくミスはなかったんだけど……」と無線で悔しさを滲ませた高木選手。実は1分18秒308という記録は、Bグループであれば6位相当の好タイムだった。グループ分けの巡り合わせが、明暗を分ける形となった。

Q2の結果を含めた総合順位は20位となり、翌日の決勝レースは20番グリッドからスタートすることに。

決勝──秋空の下、期待のレースがスタート

翌21日の決勝当日は、午前中に厚い雲がサーキット上空を覆い雨もぱらついたものの、午後には青空ものぞき、秋の柔らかな陽光と清々しい風が吹き抜ける絶好のレース日和となった。

気温24℃、路面温度32℃と、予選日よりも路面温度が上昇し、K-tunes Racingがセレクトしたダンロップの硬めのタイヤが本来のパフォーマンスを発揮することが期待された。

13時40分、宮城県警の白バイ3台とパトロールカー2台に先導されたパレードランがスタート。白バイがグランドスタンド前の10%勾配を駆け上がる光景は、同シリーズにおけるSUGOならではの風物詩だ。

フォーメーションラップを経て、13時45分にセーフティーカーがピットインし、84周・300kmの決勝レースが始まった。

序盤の好走から一転、不運なアクシデント

20番グリッドからスタートを切った新田守男選手は、2ラップ目の第1コーナーでインに進入した後続車と接触。ボディ右側に軽い損傷を受けたものの、走行に支障はなくレースを続行した。

新田選手はその後、ベストラップ1分20秒841と上位勢に迫るタイムで軽快に周回を重ね、6ラップ目には30号車をオーバーテイク。22位に順位を上げる。

しかし7ラップ目、運命が暗転する。前を走る25号車が他車とのバトルで姿勢を乱し加速が鈍ったのを見逃さず、新田選手はハイポイントコーナーでアウト側から並びかけた。

だが、25号車がアウト側にふくらんだため、押し出されるようにコースアウト。コースサイドの芝には窪みがあり、96号車のアンダーフロアがヒットしてしまった。

致命的な損傷が発覚

その後もタイムの落ち込みはなく新田選手は走行を続けたが、徐々にエンジン水温が上昇し、9ラップ目に「警告灯が点灯した」との無線がピットに届いた。

96号車はスロー走行でなんとかピットに帰還。メカニックが点検したところ、ラジエーターに穴が開いており、クーラントが漏れていることが判明した。恐らく、コースアウト時の飛び石がラジエーターを直撃したものと推測される。

アンダーフロアにも損傷が及んでおり、応急修理に掛かる時間と残りレース時間を検討した結果、チームは苦渋の決断としてリタイアを選択した。

レース関係者の間では「SUGOには魔物が棲んでいる」といわれている。コース幅が狭いうえにコース長も短く、クルマが密集しやすいため、接触アクシデントが多発するからだ。今回、まさにK-tunes RCF GT3も魔物の餌食となってしまった。

相性良きSUGOでのリタイア

K-tunes Racingにとって、中高速コーナーを得意とするRCF GT3の特性が活かされるSUGOでのリタイアは、無念だった。サクセスウェイト31kgという比較的軽量な状態で、新田選手の序盤の見事な走りが示すように、上位進出の可能性は十分にあっただけに、不運なアクシデントが悔やまれる。

残り2戦となったシーズン後半戦。第7戦オートポリスは昨シーズン3位表彰台を獲得したサーキットだけに、ベテランコンビを中心としたチーム一丸での巻き返しに期待がかかる。

Comments

SUPER GT Round.6 SUGOを終えて

  • Masahiko Kageyama

    Masahiko Kageyama 影山正彦 監督

    第6戦SUGOでは、ダンロップが新開発のコンパウンドを採用したタイヤを導入したので期待していましたが、マシンとの合わせ込みが十分にできず予選20位という結果となりました。決勝では序盤のアクシデントでリタイアとなり、非常に厳しい結果で申し訳なく思っています。第7戦オートポリスでは巻き返せるよう、チーム一丸となって頑張ります。引き続き応援をよろしくお願いします。

  • Morio Nitta

    Morio Nitta 新田守男 ドライバー

    SUGOはコース幅が狭く、バトル時のポジション取りが非常に難しいサーキットです。今回は混戦に巻き込まれる形となってしまいましたが、セットアップの方向性は悪くなく、1分20秒台前半のペースで走れていました。高木選手にバトンをつなげられず申し訳なく、レースディスタンスでのデータが残せなかったのも心残りです。次戦オートポリスでは良い結果を目指します。

  • Shinichi Takagi

    Shinichi Takagi 高木真一 ドライバー

    決勝では予選からセットアップを大幅に変更し、アンダーステアを解消する方向に調整しました。その効果でアンダーステアが軽減されたので、レースではアベレージで良いタイムが出せると期待していましたが、序盤でリタイアとなり残念でした。ただ、今回導入された新しいコンパウンドのタイヤには可能性を感じています。今後、新タイヤをより活かせるセットアップの方向性を探りながら次戦に向けて頑張ります。

  • Hiroyuki Kagami

    Hiroyuki Kagami 各務宏幸 メカニック

    チームとしてはリタイアとなり非常に残念でした。コース外側の芝生に乗り上げたことでアンダーフロアに芝がかなり詰まってしまったため、高温なマフラーなどから出火するリスクなども考慮しながら、それぞれが何をすべきか一人ひとりが考えてピット作業を行いました。こうした緊急時の経験がメカニックとしての成長につながると感じていますし、今後もスキルを高めながらチームに貢献していきたいと思います。

Results

2025 AUTOBACS SUPER GT Rd.6 SUGO

  • Number
    96
  • Machine
    K-tunes RCF GT3
  • Driver
    新田守男/高木真一

09.20 公式予選 Q1 Aグループ スポーツランドSUGO 天候:曇り 路面:ドライ

  • Position
    10th
  • Best Time
    1'18.308
  • Tyre
    DL

09.21 決勝レース スポーツランドSUGO 天候:晴れ 路面:ドライ

  • Position
    Not Classified
  • Best Time
    1'20.841
  • Tyre
    DL
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