3台体制で臨む連覇への挑戦<br>福住仁嶺選手を迎えた新シーズンが開幕

GT WCA 2025 JAPAN CUP Series Preview3台体制で臨む連覇への挑戦
福住仁嶺選手を迎えた新シーズンが開幕

by Koichi Yamaguchi/ June 11, 2025

6月13〜15日に宮城県スポーツランドSUGOで開幕を迎えるGT World Challenge Asia 2025 JAPAN CUP。K-tunes Racingにとって、この週末は単なるシーズンスタートではない。昨季、Ferrari 296 GT3でシリーズ初代チャンピオンに輝いた王者として臨む特別な戦いが始まるのだ。

GT World Challenge Asia JAPAN CUPとは

GT World Challenge Asia(以下GT WCA)JAPAN CUPは、昨シーズンからGT WCA内で独立したシリーズとして確立された。

アマチュア(ジェントルマンドライバー)同士のペア、プロ・アマのコンビに分かれたクラス制、GT3・GT4・GTC(ポルシェカップ、フェラーリチャレンジなどのカップカー)の車両カテゴリー、ピレリのワンメイクタイヤ、そして1大会2レース制という特徴を持つ。

レース1で勝利すれば、レース2でピットストップ時のハンディキャップが課される。また、BOP(バランス・オブ・パフォーマンス)調整(※)により、戦略性の高いレース展開が求められる。

昨季K-tunes Racingは、GT3クラスではプロ・アマ クラスで安定した戦いを見せた。しかし今季は新たに多くの強豪チームがエントリーしており、より激しい戦いが予想される。

例えば、スーパー耐久シリーズで2連勝を果たしている藤波清斗選手/BANKCY選手コンビによるseven × seven RacingのPorsche 911 GT3R、話題のMaezawa RacingのFerrari 296 GT3など、実力派が名を連ねる。

特に、同じFerrari 296 GT3を駆るチームはMaezawa Racingをはじめ計7チームに及び、純粋にドライバーのスキルやチーム戦略の差が勝敗を分ける構図となる。

3台体制での挑戦

今季K-tunes Racingは、昨シーズンに引き続きLEXUS RCF GT3、Ferrari 296 GT3、GR SUPRA GT4という3台体制で臨む。

LEXUS RCF GT3には起爆剤として、2019年にSUPER GT300でシリーズチャンピオンを獲得し、現在はGT500クラスで活躍する福住仁嶺選手を起用。「天才肌」「天性のドライビングセンスを持つ」と評される気鋭のドライバーと、ジェントルマンドライバーとして引き続きステアリングを握る末長一範選手とのコンビによる新たな化学反応が期待される。

今シーズンは、SUPER GT のK-tunes RCF GT3と同様に、トップエンジニアの一瀬俊浩氏がサポートエンジニアとして参加。SUPER GTで得られたノウハウをGT WCA用マシンにも活用可能なため、昨年以上のパフォーマンス向上が期待できる。

世界的ファッションデザイナー相澤陽介氏が手掛けた、ガンメタリックにブラックで三角形の幾何学模様を配したマシンのクールなデザインも注目ポイントだ。

Ferrari 296 GT3は、ディフェンディングチャンピオンとして高木真一選手/山脇大輔選手のコンビが継続。スーパー耐久シリーズでは高木監督と山脇選手という関係で息の合ったこのペアは、お互いを知り尽くした連携で2連覇を狙う。

このマシンは、ミッドシップレイアウトによる理想的な重量配分と低重心設計に加え、V6ターボエンジンによるパワーと優れたトラクション性能が武器だ。

GR SUPRA GT4には、昨年に引き続きジェントルマンドライバーとして永井良周選手が参戦。新たに台湾出身の女性ドライバー、ベティ・チェン選手が加入。5台のエントリーという少数激戦の中で、まずは1勝を目標とする。

SUGOという舞台

開幕戦の舞台となるスポーツランドSUGOは、K-tunes Racingにとって相性の良いサーキットだ。中高速コーナーを得意とするLEXUS RCF GT3は、過去にSUPER GTでポールポジションを2度獲得しており、GT WCAでもその優位性を発揮することが期待される。

最終セクションの上り勾配では自然吸気エンジンの特性上、ターボエンジン勢に対してやや不利だが、全体的なバランスは悪くない。

一方、Ferrari 296 GT3は持ち前の万能性でコース適性を問わない戦いができるはずだ。コース幅が狭くブラインドコーナーの多いSUGOでは、慎重な走りが求められる局面もあるが、昨季培った豊富なセットアップデータを活用して勝負に挑む。

王者の新たな挑戦

昨季の成功は他チームからのベンチマークとなり、今シーズンのK-tunes Racingは常に追われる立場となった。しかし、それこそがチャンピオンチームの宿命である。

ディフェンディングチャンピオンとしてFerrari 296 GT3での2連覇を目指す一方で、LEXUS RCF GT3での表彰台も視野に入れる。チーム内のライバル同士で切磋琢磨しつつ、いずれかのマシンでタイトルを獲得すべく、全力で戦いに挑む決意を固めている。

王者として迎える今季、この決意を胸に、いよいよ6月13日よりSUGOでの戦いが幕を開ける。

(※)「BOP(バランス・オブ・パフォーマンス)」は日本語で「性能調整」を意味し、異なる性能のマシンが競合するレースにおいて、各車両の性能差を埋め、より接戦で面白いレースを促すために導入されているシステム。

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