
2つのスプリントレースに挑んだ真夏の富士不運のリタイアから巻き返しまで2日間の激戦
Race1──予選で一時トップも不運の連鎖でリタイア 8月2…
8月16日、17日に富士スピードウェイで開催されたインタープロトシリーズ2025 Rd.2の第3、4戦では、K-tunes Racingにとって明暗の分かれる結果となった。ジェントルマンクラスでは末長一範選手が第3戦で2022年第5戦以来となる優勝を飾る一方、プロフェッショナルクラスでは阪口晴南選手がマシントラブルの影響で実質的にレースを戦うことができなかった。
「レースを、人が主役になる“スポーツ”に」——このコンセプトのもと2013年にスタートしたインタープロトシリーズ(IPS)は、今年で13年目を迎えた。福住仁嶺選手、佐々木大樹選手、阪口晴南選手といったSUPER GT500クラスやSUPER FORMULAで活躍するトップドライバーが多数参戦し、激戦を繰り広げることから注目度を高めているシリーズだ。
K-tunes Racingは2017年からこのシリーズに参戦を続けており、ジェントルマンドライバーの末長一範選手とプロドライバーがマシンをシェアして戦っている。昨季からプロドライバーとして阪口晴南選手が参戦している。
IPSの最大の特徴は、シリーズ専用車両「kuruma」による完全イコールコンディションでの戦いにある。ABSやトラクションコントロールといった電子制御デバイスを一切搭載せず、4リッターV6エンジンをミッドシップレイアウトで搭載したマシンは、ドライバーの技量がそのまま結果に直結する。
タイヤも横浜ゴムのワンメイクとなっており、IPSが掲げる「ドライビングアスリート」——純粋なドライビングスキルで勝負する「人」が主役となるモータースポーツのコンセプトが体現された舞台だ。
レースフォーマットも独特で、ジェントルマンドライバーとプロドライバーがそれぞれのレースに参戦する。土曜日午前にジェントルマンクラスとプロフェッショナルクラスそれぞれの予選が行われ、ジェントルマンクラスの決勝レースは土曜午後と日曜午前の2戦(各12周または25分)、プロフェッショナルクラスの決勝レースは日曜午後に連続2戦(各9周または17分)で実施される。
プロフェッショナルクラスでは第1レース終了後にそのままの順位でグリッドを組み直して第2レースに入るため、タイヤマネジメントも重要な要素となる。
5月10日、11日に富士スピードウェイで開催された開幕戦Rd.1では、K-tunes Racingにとって対照的な結果を迎えることになった。
ジェントルマンクラスでは末長選手が安定した走りを見せ、第1戦で2位表彰台を獲得する好スタートを切った。しかし第2戦では決勝中にドライブシャフトが損傷し、リタイアを余儀なくされた。
一方、プロフェッショナルクラスの阪口選手は予選で2位という好位置につけたものの、第1戦では1周目にギアボックストラブルから思うように加速できず、他車との接触が発生。レース自体が赤旗中断により不成立となり、第2戦でもマシンの復旧が間に合わずリタイアという不運に見舞われた。
8月16日、17日に再び富士スピードウェイで開催されたRd.2では、K-tunes Racingは栄光と試練を同時に味わう結果となった。
16日のジェントルマンクラス予選では、末長選手が残り10分の5ラップ目で1分47秒969のベストラップを記録し、ジェントルマンカテゴリー内のジェントルマンクラス(G)でポールポジションを獲得。このラップタイムは同カテゴリー内の格上であるジェントルマンエキスパートクラス(E)の一部の選手よりも速く、ジェントルマンカテゴリー総合でも4位という素晴らしい結果だった。
16日午後の第3戦決勝は、気温29℃、雨がパラつく難しいコンディションとなった。末長選手は4番グリッドからスタートしたが、序盤で順位を落とす。しかし、レース中にアクシデントが発生してセーフティカーが導入されると、その明けから持ち前の粘り強さを発揮し激しいバトルを繰り広げる。
8ラップ目のコカコーラコーナーで71号車のジェントルマンクラス大山正芳選手をアウト側から鮮やかにパスして総合4位(ジェントルマンクラス1位)に浮上すると、その後はトップを走る44号車のエキスパートクラス山口達雄選手と互角のタイムでラップを重ね、2022年第5戦以来となるジェントルマンクラス優勝を果たした。
「雨がパラつく難しいコンディションでしたが、セーフティカー明けからいいリズムで走ることができました」と末長選手は振り返る。
しかし翌17日の第4戦では一転して試練が待っていた。3番グリッドからスタートした末長選手だったが、レース中盤の6ラップ目に不運が襲う。激しいバトルの中で1コーナーへのブレーキタイミングを遅らせ、強めにブレーキングを行った。
しかし前後ブレーキバランスが想定よりリア寄りだったことに加え、タイヤが完全に暖まっていない状況で本来のグリップを得られず、180度スピンを喫してガードレールに接触。右側前後サスペンションとドライブシャフトを損傷し、リタイアとなった。
阪口選手は16日のプロフェッショナルクラス予選で6位につけ、6番グリッドを獲得していたが、午前に実施されたジェントルマンクラス第4戦決勝でのアクシデント修復作業が午後の決勝レースまでに間に合うかが焦点となった。メカニックチームは懸命の修復作業を行い、なんとか第3戦スタートまでに作業を終えることができた。
しかし、ピットアウトしてからグリッドまでの走行中に阪口選手は左右のステアバランスに異常があることを感知する。やむを得ず、メカニックたちはマシンをグリッドからピットに移動し、第3戦決勝レース中にマシンの確認作業を実施するも、第4戦決勝スタートにも間に合わず、レース終盤にようやく確認作業が完了した。
阪口選手はマシンのチェックのためにコースインし、異常がないことを確認。1分46秒896と上位チームに匹敵するベストラップを記録するものの、既にレースは終盤に差し掛かっており、実質的に決勝レースでの走行機会を失う結果となった。
ジェントルマンクラスでは2022年、23年と2年連続でシリーズチャンピオンを獲得した末長選手が第3戦にてポール・トゥ・ウィンを飾った。残り2戦でも第3戦で見せたような巧みなレース運びに注目したい。
一方、プロフェッショナルクラスではマシントラブルが続く阪口選手にとって、残る第5戦、第6戦が本来の実力を発揮する重要な機会となる。来シーズンに向けても、この2戦での結果が大きな意味を持つことになりそうだ。
Inter Proto Series 2025 Rd.3-4を終えて
昨季からマシンのセッティングに悩んできましたが、今シーズンはエンジニアなど体制が変わって、ようやくいいセットアップが見つかりつつあります。上位カテゴリーであるGT WCAでの経験や、新田守男選手、阪口晴南選手、そしてGT WORLD CHALLENGE ASIAでコンビを組んでいる福住仁嶺選手からのアドバイスがドライバーとしての成長に繋がっていると感じています。11月の最終ラウンドも期待していてください。
Sena Sakaguchi 阪口晴南 ドライバー
第3戦決勝では、グリッドまでの1周でステアリングから伝わってくるフィーリングがいつもと違い、何かトラブルがあると判断しました。第3戦の出走は諦めてメカニックに確認してもらい、第4戦終盤にコースインしてチェックを行いました。修復後は問題も解消され、次戦に向けていいチェックになりました。5月のRd.1に続いてレースができず、タイトル争いには絡めなくなってしまいましたが、最終戦では気持ちよく勝利して今季を終わりたいと思います。
08/16 ジェントルマンクラス予選 富士スピードウェイ 天候:曇り 路面:ドライ
08/16 ジェントルマンクラス第3戦決勝 富士スピードウェイ 天候:曇り/小雨
08/17 ジェントルマンクラス第4戦決勝 富士スピードウェイ 天候:曇り 路面:ドライ
08/16 プロフェッショナルクラス予選 富士スピードウェイ 天候:曇り 路面:ドライ
08/17 プロフェッショナルクラス第3戦決勝 富士スピードウェイ 天候:曇り 路面:ドライ
08/17 プロフェッショナルクラス第4戦決勝 富士スピードウェイ 天候:曇り 路面:ドライ
Kazunori Suenaga 末長一範 ドライバー