【2025年Rd.7 Autopolis】ユーモアは忘れずに
2025年10月18日・19日に大分県のオートポリスで行われたSU…
大分県のオートポリスインターナショナルレーシングコースで、SUPER GT 2025年シーズン第7戦「AUTOPOLIS GT 3Hours RACE」が開催された。標高819mの阿蘇の山脈に位置するオートポリスは、最大で上り勾配7.2%、下り勾配10%と高低差52mのアップダウンが激しいサーキットだ。さらにコーナーが連続し、路面も荒いことから、タイヤへの負担も大きい。昨シーズンは荒天の中で3位表彰台を獲得した実績を持つなどK-tunes Racingにとって相性の良いコースで、巻き返しへの期待が高まっていた。しかし、ダンロップの新コンパウンドタイヤへの対応に苦しみ、難しい判断を迫られるレースウィークとなった。
10月18日の予選日は、朝方の秋晴れから一転、10時頃には西方から雲が立ち込め、11時を回ると雨が降り始める不安定な天候となる。


午前中の公式練習走行では、新田守男選手と高木真一選手が交代でステアリングを握り、トータルで115分に及ぶセッションでダンロップの新コンパウンドタイヤへのセットアップを詰めていく。前戦SUGOで導入されたタイヤより1段階ソフトなタイヤの初投入である。
走り始めはグリップ感が不足し、やや跳ねるような挙動も見られたが、2人のベテランドライバーとチームは徐々にセットアップの方向性を見出していった。


14時45分に始まった公式予選GT300クラスAグループでは、高木選手が他チームに先んじてピットアウト。天候不安定な予選では早めにベストタイムを出しておくことが賢明だからだ。
気温21℃、路面温度23℃、湿度82%。雨はほぼ上がっており、スリックタイヤでのアタックとなる。高木選手は4ラップ目に1分45秒355を記録し4位に浮上。公式練習でのベストタイムから約1.8秒も更新し、早くも公式練習で仕上げたセットアップの成果が現れた。


しかし他チームのベストタイム更新により最終的に12位となり、Q2進出の9位とはわずか0.060秒差で惜しくも涙を飲む。ピットに戻った高木選手は、「納得いくタイムアタックができたんだが……」と残念そうに語った。
翌19日の決勝当日も天候は不安定で、午後へと時間が進むにつれてオートポリス上空に低い雲が立ち込め、冷たい風も吹き始める。
天気予報では決勝レースが行われる時間帯の降水確率が50~70%と予想されており、チームはウェットタイヤも用意するなど、前日と同様に難しい天候判断が求められる状況だった。


気温25℃、路面温度28℃と前日の公式予選時よりやや高いコンディションの中、13時16分に3時間という長丁場の決勝レースがスタートした。高木選手がステアリングを握る96号車は、22番グリッドから1周目の混戦をうまく切り抜けて19位にポジションアップする。
前述の通り、今回のレースではダンロップが新しく開発したコンパウンドのタイヤを投入している。第6戦SUGOで使用したものより1段階ソフトなタイヤだったが、10ラップほどを走った高木選手から「第1スティントを通してパフォーマンスを維持するのが難しそうだ」との無線が入る。


そこで12ラップ目にGT500マシン同士の接触によりSC(セーフティカー)が導入されたタイミングで、高木選手とチームは重大な決断を下す。土曜日の公式練習から新コンパウンドタイヤに合わせてセットアップを煮詰めてきたが、15ラップで高木選手がピットインし、実績ある従来のタイヤへの交換に踏み切ったのである。
給油とタイヤ交換を行い、K-tunes RCF GT3は25位でコースに復帰。この決断は前日から新コンパウンドタイヤに適合させてきたセットアップが活かせなくなることを意味しており、高木選手とチームにとって苦渋の選択だった。
その後、各車のピットインによる順位変動で徐々にポジションを上げ、残り1時間53分の時点で14位まで浮上する。

残り1時間13分、360号車のトラブルによりFCY(フルコースイエロー)が導入されるのを見越して、チームは54ラップ目に2度目のピットインを実施。タイヤ交換と給油、そしてドライバーを新田選手に交代した。

22位でコースに復帰した新田選手は粘り強い走りを続け、他車のピットインによる順位変動で17位までポジションを回復。
タイヤを労りながら周回を重ねたが、残り9分の87ラップ目には後続車2台にオーバーテイクされ19位に後退。その後の順位変動により18位でチェッカーフラッグを受けた。
レース終了後、15位の31号車に車両規定違反が発覚し、K-tunes Racingは1つ繰り上がって17位という結果に。惜しくもポイント圏内の15位には届かなかった。


今回のレースでは、新コンパウンドタイヤで3時間レースを戦い抜くのが難しいと判断し、序盤での戦略変更を余儀なくされた。
さらにレース後半では、特にオートポリスで見られるピックアップ(タイヤカスのトレッド面への付着)や路面温度が下がったことによるタイヤの内圧低下などで、タイヤが本来の性能を発揮できず苦しい展開に。
チームランキングは19位から20位へとひとつポジションを落としたものの、タイヤの選択など難しい判断を迫られる中での粘り強い戦いぶりは、チームにとって貴重な経験となった。

シーズン最終戦となる第8戦モビリティリゾートもてぎでは事前テストで良好なフィーリングを得ており、セットアップの方向性にも手応えを感じている。
新田選手、高木選手のベテランコンビを中心に、チーム一丸となって少しでも上位のポジションを目指し、シーズンを締めくくる。
SUPER GT Rd.7 AUTOPOLISを終えて
チームスタッフ、ドライバー、エンジニア全員が全力で取り組んでいます。チーム内では順当に進歩していますが、ライバルチームも進化しているため、なかなか順位に繋がらず苦しい戦いが続いています。22番グリッドから15位のポイント圏内を目指しましたが届きませんでした。クルマ自体は予選より良い仕上がりでしたが、結果に結びつかず非常に残念です。諦めることなく、最終戦で全力を尽くします。
Morio Nitta 新田守男 ドライバー
今回初めて実戦投入した1段階ソフトなタイヤは、公式練習で高木選手と走り込むことでかなり良い方向にセットアップを仕上げることができました。しかし、決勝では、残念ながら期待したパフォーマンスは得られませんでした。従来のタイヤに変更してからはタイヤを労りながらピットインを2回でおさめ、なんとか17位に入りました。現状では最良の結果だったと思います。この経験を踏まえて、最終戦に向けて準備していきます。
Shinichi Takagi 高木真一 ドライバー
予選では午前の公式練習でセットアップを煮詰めたことで、今持っているクルマとタイヤのポテンシャルは出し切れたと感じています。決勝では新コンパウンドタイヤで3時間を戦うのは難しいと判断し、従来のタイヤへの変更を決断しました。パフォーマンスは落ちますが、それしか選択肢はありませんでした。今回ダンロップ勢全体が厳しい結果でしたが、その中では踏ん張れました。次戦のもてぎについては事前テストで良好なセットアップができており、前向きに挑みたいと思います。
Kenichiro Kobashi 小橋健一郎 メカニック
私はタイヤ管理を担当していますが、今回は天候判断が非常に難しいレースでした。その分、パドックに持ち込むタイヤの選定や積み方を工夫するなど、自ら考えて行動することを心がけました。チームに加わって約1年半が経ちますが、ディーラーでの一般車整備とは異なり、レーシングカーはより細部までシビアに見る必要があり、メカニックとして新たな視点を得られたと思っています。
10.18 公式予選 Q1 Aグループ オートポリス 天候:曇り時々雨 路面:ドライ
10.19 決勝レース オートポリス 天候:曇り 路面:ドライ
Masahiko Kageyama 影山正彦 監督