レースを支える裏方のプロフェッショナルたち<br>K-tunes Racingのスタッフ紹介 後編

レースを支える裏方のプロフェッショナルたち
K-tunes Racingのスタッフ紹介 後編

by Koichi Yamaguchi / February 00, 2026

前編ではチーム代表の石井貴之、メカニックの山地隼人、下江浩晃、上村啓太、小橋健一郎、各務宏幸を紹介した。後編では、引き続きメカニックからエンジニア、マネージャーまでK-tunes Racingを支えるスタッフたちに焦点を当て、日頃は表に出ることのないプロフェッショナルたちの仕事と、チームへの思いを紹介する。

体格を買われて抜擢された燃料担当

メカニック 山田将嗣

プラモデルやミニ四駆作りが好きだった少年は、小学校低学年の時に整備工場を見て「こういう仕事もあるんだ」と目を輝かせた。1990年、岡山に生まれた山田将嗣は、高校で農業機械科に進み、専門学校を経て岡山トヨペットへ入社。5年間の車検整備担当、レクサス倉敷での9年10カ月の整備士を経て、2025年4月、山地の誘いでK-tunes Racingへ転籍した。

石井代表は山田の柔道選手のような体格を見て、重い給油器具を扱う燃料担当に最適だと判断。現在はSUPER GTの燃料管理、インタープロトシリーズ(以下IPS)のメカニックを担当する。

燃料管理は気温、気圧、ピットエリアの勾配などの環境によって給油速度が変わるため、毎回計測して1秒あたりの給油量をkg単位で算出。レース中はエンジニアの指示に従い、秒単位で正確に給油する。

「レースカーは構造が一般車と違うので、K-tunes Racingに来て一から学んでいます。燃料管理では、リッターではなくkg単位で計算します。気温で比重が変わるため、重さで計測しないと正確な量が入りません。ピット作業は1秒の差がレースの結果を左右するので、細心の注意を払っています。

2025年開幕戦岡山で初めて燃料担当を任された時は不安でしたが、チームに支えられて、1シーズンを無事に終えることができました。来シーズンは給油後の報告をより迅速に行い、エンジニアが的確な判断を下せる環境を作りたいと思っています」

ピット作業の緊張感が好きな最年少メカ

メカニック 光森太陽

高校時代には地元の先輩たちのバイクを夜通しカスタムしていた光森太陽。岡山出身の31歳は、自分で乗るより人の要望に応えて機械をいじる方が楽しかったという。

専門学校で自動車整備を学び、岡山トヨペットへ入社。ディーラーで約10年勤務した後、2024年に上司からK-tunes Racingへの異動を命じられた。

家を建てている最中、妻は妊娠中という状況だったが、話し合いを重ねて転籍を決意。2025年シーズンはGT World Challenge Asia JAPAN CUP(以下GT WCA)のGR SUPRA GT4 Evo2とのLEXUS RC F GT3のメンテナンス、ピット作業ではタイヤ交換を担当する。

「中学まで野球をしていたこともあって、勝負の世界が好きです。タイヤ交換は野球の打席に入る感覚に似ています。レース中はピット作業が1回であることが多いので、1打席しかない緊張感があります。2025年開幕戦が初舞台で、練習は重ねていましたが、本番の緊張感と楽しさは格別でした。

ディーラーでは10年も働くと後輩を教える立場になり、手を汚してクルマをいじる機会が減っていきます。K-tunesではメカニックの中で年齢が一番下なので、仕事に集中できます。

2026年シーズンは、隣のピットにいるGT500クラスのチームの作業を見て学びながら、タイヤ交換のスピードと正確性を高めていきたい。2年目になれば1年目のような甘えは許されないので、チーム内で誰よりも早く正確な作業ができるようになることが目標です」

世界的キャリアを誇る強力な助っ人

チーフエンジニア 加藤博

F1、ル・マン24時間耐久レース、そしてSUPER GTやSUPER FORMULAなどのトップカテゴリーで30年以上のキャリアを積み重ねてきた加藤博。F1から入門カテゴリーまで欧米・世界を渡り歩き、様々なカテゴリー・クラスにおいてチャンピオン獲得の経験も持つ。

国内外大手企業にて自動車・航空機の設計・開発等に従事した後、レース界へ転身。2025年はK-tunes RacingのIPSとGT WCAでチーフエンジニアを務め、GT WCA JAPAN CUPのGT4 AMクラスではGR SUPRA GT4 Evo2でシリーズチャンピオンを獲得。

K-tunesに関わる目的は、チームスタッフに理論とロジックを伝え、次世代のエンジニアを育成することだと力強く語る。

「K-tunes Racingは、レーシングチームとして発祥した会社ではなく、岡山トヨペットの社員教育や地域貢献の一環として始まっています。成績を出すことはもちろん大切ですが、人材育成の結果として成績が伴ってくる形が理想だと考えています。

日本には、欧米並みのレーシングカーエンジニアリングの理論や哲学を持った人が少ない。経験と勘だけでは、次の世代に伝えるロジックがありません。K-tunesのスタッフたちに理論を伝えながら、エンジニアリングベースの考え方を持てる人が一人でも増えればと思っています。

2025年シーズン初め、インタープロトのマシンはトップ争いとは程遠い状態でしたが、末長選手の要求に応え、シーズン中盤以降に優勝できるレベルまで進化させることができたのは、スタッフ全員が学習しながら伸びてきた結果です。来シーズンは、彼らがもう一段階スキルを上げ、私が一歩後ろに引いても自分たちで判断できるようになることが目標です」

チームの一員として働く喜びを求めてマネージャーに

マネージャー 鈴木志歩

名古屋出身の鈴木志歩は、F1好きの父の影響で幼い頃から鈴鹿サーキットに足を運んできた。

18歳で岡山国際サーキットのサーキットクイーンとしてキャリアをスタートし、SUPER GTのレースアンバサダーとしても活躍。しかし、レースアンバサダー時代はチームの控え室も別で、メカニックやドライバーと接する時間はピットウォークやグリッド時のみ。チームの一員という実感が持てなかった。

コロナ禍明け、SHADE RACINGでマネージャーを初めて経験し、チームの一員として働く喜びを知った。2023年からK-tunes RacingのSUPER GTとGT WCAでマネージャーを務め、2025年で3年目を迎える。

現場での設営、ドライバーやメカニックの装備品管理、洗濯、体調管理など、その仕事は多岐にわたる。「運動部のマネージャー」と表現する通り、ドライバーやメカニックがストレスなく仕事に集中できるよう、あらゆる面でサポートする。

「レースアンバサダー時代は、レースの状況もSNSで確認するような感じで、チームの一員という実感が持てませんでした。マネージャーとしてチームに入れたら一番いいと思っていたので、お話をいただいた時は本当に嬉しかったです。

マネージャーの仕事は、ドライバーやメカニックがベストなパフォーマンスを発揮できるようサポートすること。代わりがいない人たちなので、体調不良者を出さないよう、特に暑い時期はドリンクの準備や体調管理に気を配っています。

2025年シーズンは何も問題なく終えることができて良かったです。4、5年マネージャーをやってきて慣れが出てくると、視野が狭くなったり、もっとこうしておけばと思うこともあります。2026年シーズンはより先読みして、みんなのサポートをしっかりできるようにしたいと思います」

経理から現場サポートまでこなす縁の下の力持ち

経理兼マネージャーアシスタント 小椋有里子

元銀行員の小椋有里子は、石井代表との縁からK-tunes Racingで経理を担当することになった。レース未経験だった彼女が、1年9カ月でチーム運営に欠かせない存在となっている。

主な業務は経理だが、スポンサーが来場するレースでは現場サポートスタッフとしてサーキットへ。2025年シーズンはSUPER GT第1岡山、第7戦オートポリス、GT WCA鈴鹿大会、そして岡山チャレンジカップに参加した。

サーキットでは、ホスピタリティスペースの運営管理、補食やドリンクの準備、洗濯など、マネージャーのサポート業務を担当する。2025年、K-tunes Racingは会社化され、小椋は経理としても重要な役割を果たしている。

「レースの世界は初めてでしたが、表舞台の裏に多くのスタッフが存在していることに驚きました。小さなことでも計画的に準備しないとミスに繋がる。私は基本的にサーキットに行かないので、現地スタッフがスムーズに動けるよう、事前の準備を丁寧に行うことを心がけています。

サーキットでは主にスポンサー対応で、ホスピタリティスペースにいることが多いのですが、チームの無線を聞いていると『こういう戦略を立てているんだ』と純粋にレースが面白いと感じました。印象的だったのは鈴鹿1000kmレース前夜のエンジントラブル。載せ替えを決断し、メカニックが夜中まで力を合わせて作業する姿に感動しました。

2025年は会社化もあり、自分に余裕がありませんでした。2026年シーズンも、メカニックの人たちが気持ちよくドライバーをサポートできるよう、モチベーションを高く保てる環境作りを心がけたいと思います」

「倉敷から世界へ」挑戦を続けるオーナー兼ジェントルマンドライバー

チームオーナー 末長一範

岡山トヨペットの末長一範社長は、2013年にK-tunes Racingを発足させた。レース活動を軸としたクルマファンづくり、ドライビングレッスンを通じた地域貢献、メカニックの人材育成を目的に、モータースポーツ活動に取り組んできた。「倉敷から世界へ」と限界を決めずに挑戦することで、地域の人々に夢や希望を与えるチームを目指している。

自らも国際C級ライセンスを持ち、ジェントルマンドライバーとしてGT WCAとIPSに参戦。IPSでは2025年シーズンに2度表彰台の中央に立った。

「2026年シーズンは、K-tunes Racingにとって重要な年になります。新田選手と高木選手には表彰台のトップに立ってもらいたいし、2人にも覚悟を持ってレースに臨んでほしい。そのために、チームとしても全力でサポートしていきます。

2025年シーズンは、IPSで2度優勝でき、GT WCAでも永井(良周)選手とベティ(チェン)選手がGT4クラスでシリーズチャンピオンを獲得するなど、SUPER GT以外では結果が残せました。

GT WCAやIPSで福住(仁嶺)選手や阪口(晴南)選手など、新しい才能が加わったことも次の時代の土台づくりとして大きな意味がありました。しかしSUPER GTの結果が厳しかったため、全体としては曇り時々晴れのシーズンでした。

K-tunes Racingはかつてシリーズ争いをした輝かしい時代のイメージに引っぱられている部分もありますが、体制もメンバーもドライバーも変わっています。2026年シーズンは、新しい時代のK-tunes Racingとして結果を出していきたいと思います。どうぞK-tunes Racingにご期待ください」

それぞれの専門性を持つプロフェッショナルたちが結集し、ドライバーを支え、一丸となって勝利を目指す。倉敷から世界へ──K-tunes Racingの新たな挑戦が、2026年シーズン、幕を開ける。

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