【2025年Rd.8最終戦MOTEGI】しんみりと感謝
2025年11月1日・2日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで…
栃木県のモビリティリゾートもてぎで、SUPER GT 2025年シーズン第8戦「MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL」が開催された。最終戦となる今大会、96号車K-tunes RCF GT3は1周目に接触アクシデントに見舞われながらも、新田守男選手、高木真一選手のベテランコンビが粘りの走りを見せた。13位完走で3ポイントを獲得し、第5戦鈴鹿以来、今シーズン5回目のポイント圏内でシーズンを締めくくった。
11月1日午前の公式練習では従来コンパウンドのタイヤでセットアップを詰めたが、ベストタイムはトップから2秒遅れ。予選の一発のタイムを出すという面で厳しい状況に直面したチームは、重要な決断を下す。バックアップとして用意していた新コンパウンドのタイヤを予選Q1で使用することにしたのだ。


公式練習の際には20℃を切っていた気温が午後の予選時は25℃に、路面温度も28℃まで上がり、タイヤにとって好条件となる。Q1で高木選手は最終ラップに1分46秒955を記録し、Bグループ3位でQ2進出を果たした。新コンパウンドのタイヤと路面コンディション、セットアップの変更――すべてが見事にマッチした結果だ。


しかし、バックアップとして持ち込んだ新コンパウンドのタイヤは1セットしかない。Q2を担当する新田選手は従来コンパウンドのタイヤでアタックし、1分47秒711を記録したが18位に終わり、決勝レースは18番グリッドからのスタートとなった。
11月2日(日)の決勝は、気温20℃、路面温度22℃と土曜日の予選よりやや低く、決勝のロングを戦うにはタイヤに優しいコンディションだ。ちなみに抽選の結果、第1スティントは、Q1で履いた新コンパウンドのタイヤで走ることとなった。


栃木県警のパトカー、白バイ先導によるパレードランの後、いよいよ2025年シーズンを締めくくる決勝レースが13時07分にスタート。しかし、レースは1周目から波乱の展開を迎える。
第5コーナーで3台が横並びで進入する中、イン側の87号車が中央の9号車に接触。コースのアウトサイドを走行していた96号車は接触された9号車に押し出される形でコースアウト。順位は最下位まで後退したが、高木選手はかろうじてコースに復帰した。


終わった──パドックでモニターを見つめるスタッフ全員の脳裏にそんな言葉がよぎった瞬間、高木選手から無線が入る。
「フロントサスペンションのアライメントがずれたようだ。左が曲がりにくい。ただ、左コーナーで通常よりステアリングを多く切れば、走り続けられる」
この無線がチーム関係者を安堵させた。

ダメージを抱えながらも、高木選手は冷静に順位を回復していく。12ラップで20位、16ラップで18位、18ラップで17位と着実にポジションを上げる。さらに23ラップ以降、他車が続々とピットインする中で粘り強く周回を重ね、36ラップ目にはトップに立つ。


38ラップ目にピットインし、タイヤ交換と給油を実施。新田選手は11位でコースに復帰する。
ピットで外されたタイヤに、驚くべき事実が判明する。右の前後がホイールリムから外れかけていたのだ。この深刻なダメージを目の当たりにした高木選手や影山監督は、予定ラップ数を走り切れたことに胸をなで下ろした。


第2スティントを担当した新田選手は、アウトラップで2台にオーバーテイクされ13位に後退。ステアリングセンターがずれた状態に戸惑いつつも即座に対応し、一時は前走者の777号車にピタリと付けるほどの走りをみせる。
50ラップ目にFCY(フルコースイエロー)が導入された後は、タイヤが冷えたためかややペースが落ちたが、新田選手は最後まで集中力を切らすことなく走り切る。13位完走で3ポイントを獲得し、2025年シーズンの戦いに幕を下ろした。


今回の最終戦では、新コンパウンドタイヤとセットアップの相性が見事にマッチし、今シーズン最高のパフォーマンスを発揮した。
土曜日の公式練習後、ドライバーのフィードバックを受けてエンジニア陣が大きくセットアップを変更したことが、予選Q1と決勝レースで大きな成果をもたらしたのだ。


1周目のアクシデントがなければ10位以内も十分に狙える速さだった。最終戦で見えたダンロップタイヤのポテンシャルとセットアップの方向性は、来シーズンに向けた確かな手応えとなった。K-tunes Racingの2025年シーズンは、こうして幕を閉じた。

SUPER GT Rd.8 MOTEGI を終えて
公式練習後に思い切ってセットアップをかなり変更したことが、予選Q1突破と決勝での好パフォーマンスに繋がりました。1周目のアクシデントで最下位まで落ちましたが、不幸中の幸いで走り続けることができました。ピットで外したタイヤを見たときは鳥肌が立ちました。よくあの状態で38周も走り切ってくれたと思います。最終戦で掴んだセットアップとタイヤの方向性は、来季に向けた大きな収穫です。チーム一丸となって来シーズンに挑みます。
Morio Nitta 新田守男 ドライバー
決勝では接触トラブルの影響でステアリングセンターがずれており、走り始めは慣れるのに苦労しました。ただ、それ以外はセットアップの状態も悪くなく、777号車を追いかけながらオーバーテイクのチャンスをうかがいました。高木選手が38ラップまで粘ってくれたおかげで、従来タイヤが大きくパフォーマンスを落とすことなくチェッカーフラッグを受けることができました。最終戦で新しいタイヤとセットアップの方向性が見えてきたので、来シーズンは常に上位を狙って戦いたいと思います。
Shinichi Takagi 高木真一 ドライバー
予選Q1では、バックアップ用に持ち込んだ新コンパウンドのタイヤが見事にマッチしました。決勝で接触された瞬間は「終わった」と思いましたが、タイヤがなんとか持ちこたえてくれました。今回の新しいタイヤとセットアップがドンピシャで、トップ勢と変わらないタイムで走れました。一瀬(俊浩)エンジニアを中心にエンジニア陣が、1年かけてダンロップタイヤに合わせたセットアップを見つけてくれた成果だと思います。この大きな収穫を生かして、来シーズンは必ず上位を狙います。
Hayato Yamaji 山地隼人 メカニック
シーズン初めは経験の少ないメンバーも多かったのですが、レースごとにみんなしっかりと役割を果たせるようになりました。今日のピット作業はほとんどミスなく行うことができたと思っています。チームとしての成長を実感できた最終戦でした。この1年で培ったチームワークを武器に、来シーズンはさらにチームに貢献していきたいと思います。
11.1 公式予選Q1グループB モビリティリゾートもてぎ 天候:晴れ 路面:ドライ
11.1 公式予選Q2 モビリティリゾートもてぎ 天候:晴れ 路面:ドライ
11.2 決勝レース モビリティリゾートもてぎ 天候:晴れ 路面:ドライ
Masahiko Kageyama 影山正彦 監督