阿蘇の山岳コースで迎える3時間の長丁場かつて表彰台に立った舞台でシングルフィニッシュを目指す
全戦完走で重ねた30ポイント 今シーズンは、開幕戦岡山…
10月17日(土)・18日(日)、大分県のオートポリス インターナショナルレーシングコースで「2026 AUTOBACS SUPER GT 第7戦 オートポリス GT 3 HOURS RACE」が開催された。残り2大会3レースとなったシーズン終盤の一戦で、96号車K-tunes RCF GT3は7番グリッドからスタートし、新田守男選手と高木真一選手が3時間を走り切ってトップでチェッカーフラッグを受けた。K-tunes RacingにとってSUPER GTでの優勝は、2019年5月の鈴鹿大会以来7年ぶりとなる。
17日(土)午前の公式練習。ソフト目のタイヤで走り出した新田選手は、1コーナー、2コーナー、第1ヘアピンの進入のブレーキングでオーバーステア気味だと無線で伝えた。


一瀬俊浩チーフエンジニアをはじめとするチームがこれを受けてセットアップを調整すると、交代した高木選手は、一転してアンダーステア傾向を訴える。アクセルのオフでフロントがインに入っていかないという。
右、左と連続する100Rコーナーでは3速だとリミッターに当たり、4速では加速が伸びないと、ギア比がコースに合わないことも指摘した。昨シーズンには生じなかった現象で、コーナリングスピードが高まったためだった。


チームは足回りを固める方向でセットアップを煮詰めたものの、ベストタイムは1分45秒635で18番手にとどまる。
予選に向けて、チームは公式練習より温度レンジの高いコンパウンドのタイヤを選び、高木選手の要望を受けてセットアップをオーバーステア方向に振った。少しでも車両を軽くするため、ドライバーはクールスーツを降ろし、暑さを我慢してアタックに臨む。



気温23℃、路面温度29℃と、公式練習から路面温度が6℃上がったなか、14時48分、Q1Bグループがスタート。高木選手は残り50秒で最後のアタックに入る。初めて履くタイヤのグリップは想定以上で、ブレーキングのタイミングを自分のイメージより奥へ修正しながら、1分43秒978をマーク。トップと0.035秒差の2番手でQ2へ進んだ。
Q2を担当した新田選手は、高木選手と同様、公式練習で迷っていた100Rを4速で攻める。ハード目のタイヤのパフォーマンスが高く、公式練習からさらにコーナリング速度が上がったからだ。



4周目のアタックでは、第1ヘアピンの出口でマシンが跳ねてリアが大きく流れた。新田選手は「本当にスピンしてガードレールに刺さると思った」ほどの挙動を立て直し、ロスを0.2秒ほどにとどめ、1分43秒746で7番手につけた。
前戦SUGO大会の22番グリッドをはじめ、中団から後方でのスタートが続いていた96号車にとって、今季最上位のグリッドである。


18日(日)の決勝は3時間で競われ、給油をともなうピットインが2回義務づけられている。スタートで履くのは、前日の予選で使ったタイヤだ。
気温は25℃、路面温度は33℃。前日の予選時より路面温度が4℃高く、チームの想定を上回る暑さとなった。事前テストではロングランを走れておらず、スタートを担う新田選手が何より気にかけていたのは、予選で使ったタイヤが第1スティントの最後までもつかどうかだった。


13時16分、決勝レースがスタート。7番手で1コーナーに飛び込んだ新田選手は、同じ周に65号車、9周目には666号車に先行を許して9番手に後退。序盤はペースをコントロールしてタイヤを守りながら、トップ勢と変わらないラップタイムで前を追う。
13周目に65号車を抜き返し、20周目には7号車をかわして7番手に戻す。22周目、31号車のタイヤ脱落でSC(セーフティカー)が導入された。
一瀬チーフエンジニアは「前とのギャップが詰まるからラッキーだけど、タイヤの内圧に気をつけて」と伝える。SCの先導で速度が落ちるとタイヤが冷え、内圧が下がるためだ。


SC明けに上位勢が1回目のピットインに向かうなか、96号車は走り続け、32周を終えて4番手に。33周目に60号車を抜いて3番手に上がると、ここで新田選手がペースを上げる。
34周目に1分48秒377をマークすると、一瀬チーフエンジニアから「いま一番速いよ」と無線が入る。その後も48秒台を重ね、38周目には2番手に浮上。
「新田さん、この周にボックス!」の無線を受け、新田選手は40周を走り切ってピットに戻った。


チームは、1回目のピットインでフロント2輪のみ交換も検討していたが、4輪すべてを交換した。ハード目のタイヤは2セットしかなく、2輪交換で替えなかったリア2輪が先に限界を迎えれば、残るソフト目のタイヤで長い距離を走らざるを得なくなる。
その分ピット作業に時間を要し、高木選手はアウトラップを終えた時点で16番手まで順位を下げた。ここから高木選手は48秒台のペースで追い上げ、46周目に6号車をかわす。


47周目、52号車のスピンでFCY(フルコースイエロー)が導入され、そのままSCに移行。他車のピットインやペナルティで順位が入れ替わり、SC明けの55周目には3番手まで浮上していた。
56周目、2号車のピットインで2番手に浮上。トップの777号車を上回る1分48秒058を刻み、58周目、777号車がピットに入ると、96号車は暫定ながらトップに立った。
勝負を分けたのは2回目のピットである。2度のSCで、レースの周回数は当初の予定より5周ほど少なくなる見込みとなった。
一瀬チーフエンジニアは、第1スティントを終えたタイヤ4本の状態から無交換の可能性を探り、ブリヂストンにもそのタイヤを確認してもらったうえで、この周回数なら走り切れると判断した。RCF GT3では初めて試すタイヤ無交換だった。


ピットインのタイミングも予定より早めた。後続との差が開いている今なら、クリーンな位置でコースに戻れる。ピットを引っ張るうちにSCやFCYが出て差が詰まれば、ピット後に順位を落としかねない。表彰台を確実にするための判断だった。
64周を終えてピットインした96号車は、給油のみでコースへ復帰した。アウトラップを終えて4番手。それでも一瀬チーフエンジニアは「いま実質2位を走っている」と高木選手に伝える。トップ2台には、まだ2回目のピットインが残っていた。


68周目、高木選手はホームストレートで3番手の360号車を捉える。1コーナーでインを突くが、抜き切れない。サイド・バイ・サイドのままアステモコーナー(第3コーナー)へ飛び込み、今度はインから危なげなく前に出た。まさにベテランならではの巧みなオーバーテイクだった。
そして71周で62号車、72周で18号車がピットインすると、96号車はついに名実ともにトップに立つ。
あとは逃げ切るだけだ。「あと20分頑張ってね。後ろとのタイムギャップは10秒あるから大丈夫」と一瀬チーフエンジニアの声が無線で届く。多くのマシンが1分50〜52秒台までペースを落とす終盤も、タイヤ無交換の高木選手は49秒台を守り続けた。

16時18分、93周を走り切った96号車はトップでチェッカーフラッグを受ける。2位の360号車とのギャップは25秒828まで広がっていた。
ピットでゴールを見守っていた新田選手は目を真っ赤に染め、影山正彦監督やチームスタッフと勝利の喜びを分かち合った。パルクフェルメでクルマを降りた高木選手を新田選手が出迎え、2人は涙ながらに健闘をたたえ合った。2022年、K-tunes Racingで12年ぶりにコンビを復活させた2人が、5年目にしてつかんだコンビ復活後初の勝利だ。


59歳261日での優勝により、新田選手はレジェンドドライバー高橋国光選手が保持していた最年長勝利記録(59歳93日)を27年ぶりに塗り替えた。GT300の通算勝利数は新田選手が23勝で歴代1位、高木選手が22勝で歴代2位。チームは28ポイントを加えて累計58ポイントとし、ランキングを18位から7位へ上げた。
一瀬チーフエンジニアはレース後、勝利の起点に予選を挙げた。Q1、Q2で上位のポジションを得たことが、決勝の流れをつくったという。


もう一つは、シーズン途中から取り組んできた、タイヤへの負担を減らす方向のセットアップだ。タイヤへの負荷が大きいオートポリスで、その方向性が結果につながった。前戦SUGO大会で知見が蓄積し、セットアップを変えたときのクルマの動きもおおむね予想できるようになってきたという。
残るは、第3戦と第8戦を併催するもてぎ大会。K-tunes Racingは、その2レースでも優勝を目指す。
SUPER GT Rd.7 AUTOPOLISを終えて
土曜日朝の公式練習は持ち込んだクルマの状態が思わしくなく、いきなりダンパー交換から始まったので不安でしたが、チームが一丸となって短い時間でまとめ上げてくれて、7番グリッドを獲得できました。決勝では、新田選手が予選で使ったタイヤのまま一桁順位のペースで走ってくれたので、「いけるぞ」という思いで高木選手を送り出しました。終盤は我慢比べで、高木選手が最終コーナーを立ち上がってくるまで安心はできませんでした。長年レースに携わってきましたが、勝てると思ったことは一度もありません。いつも不安と戦いながら、必ずいいところがあると信じてやってきました。それが報われた気持ちです。
Morio Nitta 新田守男 ドライバー
大会前日、チームのみんなに、残り3戦は10代の頃のようなピュアな気持ちでレースに臨ませてほしいとお願いしました。すると笑顔で「一緒にやってやりましょう」と応えてくれて、その思いが全員に伝わったのかなと思います。高木選手と組み、期待をかけてもらいながら結果を出せない時期が続いて、僕も監督も同じプレッシャーを感じていました。だからこそ、今のメンバーでSUPER GTに勝つという経験を、何とかみんなにさせてあげたかったんです。これまでいろいろなレースで勝たせてもらいましたが、今回が一番うれしい優勝です。
Shinichi Takagi 高木真一 ドライバー
予選は朝の公式練習とはまったく別物のタイヤで、クルマのバランスがどちらに転ぶか読めず不安でした。決勝もタイヤがどう動くか分からないなか、エンジニア陣が予想を立ててセットアップを決めてくれて、燃料が重いときも軽いときもバランスが許容範囲に収まりました。RCF GT3は軽くなるにつれて調子が上がるクルマで、その特性がうまく噛み合い、タイヤ無交換でも終盤までタイムが落ちませんでした。ドライバー交代のときは10位以内に入れればという気持ちでしたが、優勝できて本当にうれしいです。最後の2戦も表彰台を目指します。
Kenichiro Kobashi 小橋健一郎 メカニック
私はSUPER GTではタイヤ管理を担当しています。今回は、選んだタイヤがうまく合って結果につながったと思います。オートポリスはRCF GT3の特性に合っていて、これまでも好成績を残してきたサーキットなので、期待して臨みました。ただ、今シーズンはずっと中団を走りながら結果を出せず、期待と焦りが入り混じった気持ちでした。メカニックの間でも、ここで結果を出さなければ、という思いがありました。それだけに、こうして優勝できたことが本当にうれしいです。
10.18 公式予選Q1 Bグループ オートポリス インターナショナルレーシングコース 天候:晴れ 路面:ドライ
10.18 公式予選Q2 オートポリス インターナショナルレーシングコース 天候:晴れ 路面:ドライ
10.18 決勝レース オートポリス インターナショナルレーシングコース 天候:晴れ 路面:ドライ
Masahiko Kageyama 影山正彦 監督